【実務】
本患者は、腫瘤の針生検の結果より、ホルモン受容体(エストロゲン受容体、プロゲステロン受容体)が陽性であり、患者情報より、閉経前であることが確認されている。
以上のことから、閉経前のホルモン受容体陽性乳がんにおける治療薬として、抗エストロゲン薬であるタモキシフェンクエン酸塩の投与が推奨される。なお、フルベストラントは、選択的エストロゲン受容体(ER)拮抗薬であり、ER分解を促進する作用を有するため、進行性・再発性の閉経後乳がんに用いられる他、閉経前乳がんに対しては、LH-RHアゴニスト投与下でCDK4/6阻害薬(パルボシクリブなど)との併用の場合のみ用いられる。本患者は閉経前であり、進行性・再発性でもないと考えられるため、フルベストラントは用いられない。アナストロゾールは、アロマターゼ阻害薬であり、閉経後乳がんに使用する。トラスツズマブは、HER2が過剰発現された乳がんに使用するが、HER2(1+)は陰性と判定されるため、トラスツズマブは用いられない。ドセタキセル水和物は、微小管重合促進を介してがん細胞の増殖を抑制するが、本患者はがんの増殖指数であるKi-67が低値であるため、用いられない。