【実務】
リフィーディング症候群は慢性的な栄養不良状態が続いている患者に積極的な栄養補給を行うことにより発症する一連の代謝合併症の総称である。再栄養に伴う体液と電解質のシフトにより低リン血症・低カリウム血症をはじめとする電解質異常、浮腫や胸水等の水分貯留、ビタミンB1欠乏などが生じる。血中リン不足により赤血球内の2,3-ビスホスホグリセリン酸(2,3-BPG)は減少してヘモグロビンの酸素親和性を高めるため、末梢組織への酸素供給量が減少する。さらに、末梢組織もリン不足からATP産生が減少し、エネルギー失調から臓器障害を引き起こすため、致死的となりうる病態である。
1 不適切。リフィーディング症候群の高リスク患者では、初期投与エネルギーを制限し、必要なミネラルやビタミン(ビタミンB1 100
mgを1日2回投与、1週間)が投与される。参考までに、高リスク患者では現体重×10 kcal/kg/日程度から開始し(重症では5
kcal/kg/日程度から開始)、モニターしながら100~200 kcal/日ずつ増量していき、1週間以上をかけて目標量(25~30
kcal/kg/日)まで増加させる。本患者での投与エネルギー量は、290 kcal/日程度からの開始が妥当である。
2 適切。糖代謝に利用されるビタミンB1が欠乏状態であることから、再摂食時のビタミンB1消費によってビタミンB1欠乏症が起こる可能性があるため、輸液にビタミンB1の添加が必要である。
3 適切。低栄養の状態で体内に急激に糖が供給されると解糖系において糖代謝が進み、ATPや2,3-BPG産生に大量のリン酸が消費されるため、低リン血症が起きることがある。低リン血症が見られた場合にはリン酸製剤の投与を行う。
4 適切。低栄養の状態ではミネラルの欠乏が見られることがある。亜鉛はインスリンの形成に関与していることから、必要に応じて亜鉛などの微量元素の補充を行う。
5 適切。リフィーディング症候群は経口・経腸栄養より経静脈栄養での発症報告が多い。経静脈栄養では投与される水分が多くなることや、多くのグルコースを利用するために、高血糖とそれに続くインスリンの分泌が起こり、リンやカリウムなどの細胞内への移動が高まり本症を発症しやすい。そのため可能な限り腸を使って栄養補給を行うようにしていく。