【実務】
本患者の食中毒の原因菌は、原因食品や潜伏期間からサルモネラ属菌である可能性が高い。サルモネラ属菌のみならず細菌性食中毒では、発熱と下痢による脱水の補正と腹痛などの胃腸炎症状の緩和を中心に、対症療法を行うのが原則である。抗菌薬は軽症例では使用しないのが原則であるが、重症例で使用することがある。サルモネラ属菌に対して適応されるのは、ニューキノロン系(レボフロキサシン、トスフロキサシン、ノルフロキサシン)、ホスホマイシン、クロラムフェニコールなどである。
また、強力な止瀉薬は除菌を遅らせたり麻痺性イレウスを引き起こす危険があるので使用しない。解熱剤はニューキノロン系と併用禁忌のものがあり、さらに脱水を悪化させる可能性があるため、可能な限り使用を避ける。
1 誤。バンコマイシン塩酸塩散はグリコペプチド系抗菌薬であり、細菌性食中毒ではバンコマイシンに感性のメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)、クロストリディオイデス・ディフィシルが適応症である。
2 誤。クラリスロマイシン錠はマクロライド系抗菌薬であり、細菌性食中毒ではブドウ球菌属、カンピロバクター属が適応症である。
3 誤。イトラコナゾール錠はアゾール系の抗真菌薬であり、主に真菌症の治療薬である。
4 正。レボフロキサシン錠はニューキノロン系の抗菌薬であり、細菌性食中毒ではブドウ球菌属、腸球菌属、大腸菌、サルモネラ属、カンピロバクター属などが適応症である。
5 誤。イベルメクチン錠は抗寄生虫薬であり、腸管糞線虫症や疥癬の治療薬である。