10-14.28 歳の女性.関節痛と発熱とを主訴に受診した.

問題10~14
次の文を読み,10~14 の問いに答えよ.
あなたは地域中核病院総合内科をローテーション勤務する後期研修医である.外来初診患者を担当している.
28 歳の女性.関節痛と発熱とを主訴に受診した.
診察前情報:2 か月前から両手首の関節痛が持続している.1 週前から37℃台の微熱が出現した.

指導医との会話を示す.

指導医:「 関節痛とは,関節を自動的,他動的な運動時に疼痛が出現したものを指します.すなわち運動時痛〈POM:Pain on motion〉があれば関節痛と判断できます.関節痛だけでなく,関節炎をきたしているか否かが鑑別診断上,重要です.それでは炎症の5 徴について説明できますか」

 10. 炎症の5 徴に含まれないのはどれか.1 つ選べ.
(a) 発 赤
(b) 発 熱
(c) 腫 脹
(d) 機能障害
(e) チアノーゼ

【回答】 e

指導医:「 もし関節炎であれば,鑑別診断上,障害されている関節の個数(単・小・多)と両側性か片側性か否かが重要です.この患者さんが両側性の手関節炎をきたしているとします.患者の年齢,性別,2 か月間の経過および微熱を伴う点から可能性の高い疾患を考えてください」

11. この時点で可能性の高い疾患はどれか.1 つ選べ.
(a) 痛 風
(b) 線維筋痛症
(c) 変形性関節症
(d) 関節リウマチ〈RA〉
(e) リウマチ性多発筋痛症

【回答】 d

現病歴:2 か月前から特に誘因がなく両手関節の疼痛,腫脹および機能障害が持続した.朝のこわばりは10 分程度である.1 か月前から37℃の発熱が出現した.最低体温は36℃台である.感冒様症状はなかった.

指導医:「鑑別診断上,見逃しがないように,以下の事項を聴取して下さい


後期研修医:「分りました.陽性,陰性所見を記載しました」

陽性所見:全身倦怠感,発熱,両手関節の疼痛・腫脹
陰性所見:脱毛,視力低下,皮疹,口腔内潰瘍,口腔内乾燥感,息切れ,胸痛,腹痛,しびれ,Raynaud現象

12. 下線部の技法はどれか.1 つ選べ.
(a) ROS〈review of systems〉
(b) EBM〈evidence-based medicine〉
(c) POMR〈problem oriented medical record〉
(d) SOAP〈subjective/objective/assessment/plan〉
(e) RIME〈reporter/interpreter/manager/educator〉

【回答】 a

現 症:意識は清明.身長151 cm,体重51 kg.体温37.1℃.脈拍88/分,整.血圧128/74 mmHg.呼吸数14/分.
視力低下はない.皮疹はない.脱毛はない.眼瞼結膜に軽度の貧血を認める.口腔内に潰瘍や乾燥感はない.
頸部でリンパ節は触知しない.甲状腺は触知しない.心音と呼吸音とに異常はない.
腹部は平坦,軟で,肝・脾を触知しない.
四肢に浮腫を認めない.
両手関節に運動時痛,腫脹および機能障害を認める.
神経学的に異常はない.
検査所見:尿所見;蛋白(-),糖(-),潜血(-).血液所見;赤血球340 万/μℓ,Hb 9.9 g/㎗,Ht
33.0%,白血球3,400/μℓ,血小板8 万/μℓ.血液生化学所見;総蛋白7.9 g/㎗,アルブミン4.0 g/㎗,
尿素窒素19 mg/㎗,クレアチニン0.9 mg/㎗,
AST 20 IU/ℓ,ALT 28 IU/ℓ,LD 286 IU/ℓ(基準176~353),ALP 253 IU/ℓ(基準115~359),γ-GTP 40 IU/ℓ(基準8~50),CK 145 IU/ℓ(基準40~200).CRP 0.4 mg/㎗.
両手X線写真に異常はない.

後期研修医:「 膠原病の可能性が高いと考えます.免疫血清学検査を追加するべきです.抗核抗体,抗dsDNA抗体,抗Sm抗体,抗CCP抗体,抗RNP抗体を提出してはどうでしょうか」

指導医:「 この患者で,ある免疫血清学検査が陰性であれば,全身性エリテマトーデスは否定的です.最初にこの検査項目を追加しましょう」

13. 下線部の検査について正しいのはどれか.1 つ選べ.
(a) 感度は低い.
(b) 感度は高い.
(c) 特異度は低い.
(d) 特異度は高い.
(e) 感度と特異度とはほぼ等しい.

【回答】 b